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はじめに
看護技術教育は看護教育で重要な学習要素であり,看護基礎教育でも新人教育でも熱心に取り組まれている。看護技術教育の最終目標は,看護実践の場で患者の状況に合わせた技術の提供ができるようになること,すなわち,看護実践能力につながる技術教育であるといえよう。今日の臨地実習では,学内で学んだ看護技術を実践の場で患者に実施する機会が少なくなり,看護技術の習得が困難な状況にある。このような状況下で,できるだけ実践能力につながるような技術教育を行うには,学内演習や臨地実習において,技術教育の方法を工夫する必要がある。
学生が看護技術をどのようにとらえ学習するかは,技術の習得度をどのように評価するかにも大きく影響されると考える。たとえば,手順を重視する評価では,手順に重きをおきながら技術習得しようとする。研究者らが実施した看護技術教育に関する調査では,少なからずの看護基礎教育機関が技術教育の評価規準を求めていることが明らかになった1)。
文献検討では,学内での技術教育においての看護技術の到達度を評価する取り組みが報告されている。臨場感のある教育方法として,模擬患者の活用2,3)やOSCE等4,5)の導入の報告もある。しかし,いずれの文献においても評価規準については,十分な検討がされているとは言えず,更なる研究が必要である。
筆者らは,平成20年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)を受け,看護実践能力につながる技術教育の評価規準の作成に向けて研究的取り組みを行い,「教授・学習目標の枠組み」と「評価の枠組み」を作成し6),これらをあわせて「看護実践能力につながる技術教育の評価規準(案)」とした。この評価規準(案)は,学内演習で事例や模擬患者を応用した技術教育の評価に用いることができるだけでなく,実習の場における看護技術がどれくらいできているかを評価する場合にも教員と臨床指導者の共通の枠組みとして活用できると考える。また,この枠組みは学生にとっては技術の積み重ねの視点の道標としても活用可能であると考えるが,妥当性を検証されたものではない。そこで,興味をもたれた読者に活用いただき,より良い規準に改善できれば幸いと考え,公表することにした。
本報告は,(1)看護技術教育の教授・学習目標の枠組み,(2)看護技術教育の評価の枠組み,(3)学内演習での活用例,(4)実習での活用例の4回に分けて報告する。なお,本報告の前提は,看護技術はあらゆる看護実践能力を用いて実施するものであるということである。
今回は,看護技術教育の教授・学習目標の枠組みと評価の枠組み作成のプロセス,および看護技術教育の教授・学習目標の構成について述べる。
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