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はじめに
「看護実践能力育成につながる技術教育をめざした看護技術評価規準(案)」について,第1回「看護技術教育の教授・学習目標の枠組み」,第2回「看護技術教育の評価の枠組み」の作成プロセスとその構成を2回にわたって報告し1, 2),さらに第3回では,学内演習で看護技術を評価する際に「看護技術教育の評価の枠組み」を用いた活用例について述べた3)。最終回となる今回は,「看護技術評価規準(案)」を実習においてどのように活用できるかについて述べる。
前回紹介したように,学内演習で状況設定をしながら看護技術チェックを行うことは,臨場感のある学習方法として有効ではあるものの,それらの看護技術は,そのまま実習場面で応用できるわけではない。それは,学生の技術の未熟さのために,実際の場面で活用できないのではなく,臨床場面での患者がもつ条件や要求がさまざまであり,物理的環境や人的環境の条件が多様なことによるものである。実習場面で学生は,いくつかの選択肢を用意して,患者や実習上のその時の状況に合わせてどれでも提供できる準備をしておくことで,はじめて患者とその状況に応じた最善の看護技術の提供がなされることを,身をもって知るものである。つまり,実習における看護技術教育は,実際の患者のニーズに合わせて,学生が必要な知識・態度・行動を統合し,学内演習で身につけた技術を応用しながら,実習環境の中で状況に応じて最善の看護技術を提供し,身につけていくプロセスであると言える。それは,まさに看護実践能力につながるものであり,状況判断と対処能力,チームやケア環境の理解が必要である。
実習では,学生にとっても教員にとっても,実習目標に沿い計画通りのケアを実施することは困難である。だからこそ,学生が看護技術の提供をしながら看護実践能力を修得していくためには,実習での看護技術の提供を通して,教員はどのようなことを教授し,学生はどのようなことを学ぶのかという目安(規準)が示されていることが重要である。その規準として提案したのが,「看護技術教育の教授・学習目標の枠組み」である。教員と学生が,その目安(規準)を共有することで,実習場での学生の主体的な学習を促進させることができるものと考える。
本稿では,学生による看護技術の提供場面やカンファレンスでの様子,学生の「看護技術自己評価用紙」(以下,自己評価用紙)の記入状況,教員の指導過程等を報告しながら,実習における「看護技術評価規準(案)」活用の意義について述べる。なお,本稿で報告するにあたり学生の承諾は得ているが,対象患者や,対象学生が特定できないように個人に関わる情報や具体的行動の記述は削除しているため,多少不明瞭な点があることはご容赦いただきたい。
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