特集 仕事熱心もいいけれど
働きすぎは法律違反です!
―看護師の労働市場の現状と構造―看護師の働きが評価されないのはなぜか
角田 由佳
1
Yuka Tsunoda
1
1韓国漢陽大学校国際学大学院
pp.758-764
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101313
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はじめに
看護師不足が問題視されるなかでも,その給与は上がっていないようだ.日本看護協会「2007年病院看護基礎調査」の速報によれば,「7対1入院基本料」が導入された2006年度の診療報酬改定に伴い,看護職員の基本給を上げた病院が14.9%であるのに対して,変わらない病院が81.0%,賞与にいたっては下がった病院が18.3%あり,変わらない病院が74.2%である注1).
最近の相次ぐ食料品値上げの背景の一因として,供給が需要の増大に追いつかないために起きている穀物の価格高騰があるように,経済学の通常の論理でいえば,市場において商品の需要が供給を上まわり,不足が発生するとその商品価格は上がるはずだ.しかし,看護師の労働力の価格,すなわち賃金は全体として上がっていない.
本稿では,看護師の労働市場の現状を,ほかの労働者の状況と照らし合わせながら分析したうえで,看護師の賃金が上がりにくい別の経済論理,つまり,雇用主側の影響力によって生産性を下まわる賃金水準が決定するという労働市場の「需要独占構造」について説明する.同時に,このいわば搾取される労働市場の構造を生み出す原因となる,看護師の働き方の特性を説明し,最後に現在の診療報酬制度がもつ影響に関して述べる.
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