エッセイ
看護師はチーム医療でリーダーになれるか
岩田 健太郎
1
Kentaro Iwata
1
1神戸大学感染症内科
pp.772-775
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101314
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チーム医療とmulti-disciplinary approach
チーム医療とは,異なる医療職が1つのチームをつくり,同じ方向を向いて仕事をすることだ.同じ方向を向いて,というのが大事である.しばしば私たちは大きな目標を見失い,身内の利害で頭がいっぱいになってしまう.ひどいときは,足の引っ張り合いをしてしまうことすらある.どこの組織にでもそういうことはあるものだが,とくに大学病院はその病理の根が深い.最近,一般私立病院から大学に職場が変わったが,各セクションが大きな目標(たとえば患者ケアの質の向上)を見失い,自分のところに人や金をよこせ,あっちのセクションからぶんどってくればいいというようなヘゲモニー争いの空気が時にわきおこる.このことに,おおいに困惑している.
そういうときには,衝突する利害の部分(具体的な事柄)ではなく,もう一つ大きな視野で問題を再設定してやらなければならない.これをコーチング用語ではチャンク・アップと呼ぶ.これは私の担当? いや,あなたの担当? ともめているときは「患者に何が必要なの?」と,より大きな命題にチャンク・アップ.そして,患者がそのとき必要なのは私? それともあなた?(あるいはどっちでもいい?)ともう一度各論に戻す.これをチャンク・ダウンという.このようなプロセスを踏むことで,異なる医療職同士の話し合いが単なるヘゲモニー争いに堕することなく,本来の目的を達成する.異なる職種が集まって仕事をすることをmulti-disciplinary approach(マルチディシプリナリーアプローチ)というが,これを活かすも殺すもチームの作り方,チームのあり方次第なのである.
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