特集 人材不足をどう打開するか
高齢社会における労働力と労働市場の変化
佐野 哲
1
1法政大学経営学部
pp.486-489
発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101203
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高齢労働力の特徴と変化
1.多様な集団の多様な変化と非労働力化
わが国では,少子高齢社会への急速な移行に伴って,団塊世代の定年到達への憂慮など「200X年問題」に代表されるように,労働力不足が大きな社会問題となっている.しかしながら,その「200X年」を境として高齢労働力が一気に消失してしまうなど,事態が急転するわけでは決してない.
近い将来に人口全体の約30%まで達する高齢者(65歳以上人口)の就業グループは,多様性を内包しながら徐々に変化していくと捉えるのが正しい見方である.多様性は,高齢者個々人の生き方の中に混在している.ある高齢者は,働く気力も充実し,保有する技術や知識の市場価値を維持しつつ,次世代より勝る肉体年齢でいきいきと働き続ける.一方ある高齢者は,就業意志があり健康であるものの,自らが保有する経験の労働市場価値が希望に適わず,働かずに非労働力人口となっていく.また,ある高齢者は,体力の衰えと病気の進行を不安に思い,労働力としての自らの市場価値に不満を抱きながらも,ただただ生活維持のために働く気力を振り絞っている.
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