特集 人材確保策としての看護師派遣労働のゆくえ
看護師の派遣解禁と看護労働市場の変化―看護師の働き方は変わるか
安川 文朗
1
1同志社大学研究開発推進機構
pp.831-836
発行日 2004年10月10日
Published Date 2004/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100548
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はじめに
医療情報の開示やIT化,医療の質と効率性を考慮した診療報酬体系への転換,そして医療ミスなどによる医療への不信感を背景にした患者と医療者との関係など医療環境の変化の只中で,看護職はたいへん忙しく仕事をしている。特に,診療報酬基準による看護人員配置が十分ではないといわれるなかで,一般病床における平均在院日数短縮のプレッシャーは,医療職の身体的・精神的な疲労を増大させ,若い看護師の燃えつき症候群(バーンアウト)や離職を促しているという指摘がある。
看護職の労働環境が変化すれば,それに対応して看護職の働き方も変化すると思われる。労働時間や勤務体制の厳しさによって,病院の労働環境が悪くなれば,多くの看護職が病院を離れて他の職場で働きたいと思うかもしれないし,あるいは夜勤などの激務をできるだけ避けて,比較的楽な日勤業務に特化したいと思うかもしれない。
このようななかで,看護職の医療施設への紹介予定派遣が解禁になった。この解禁を「労働の多様化」とよぶことはたやすいが,私たちはこの機会に,これからの日本社会,日本の医療制度の変化のなかで,派遣という働き方はどのような意味をもっていくのかを知ることが,より大切になる。つまり,看護職者は実際にどのような働き方をしたいと思い,また看護職を雇用する側は彼らにどのように働いてもらいたいと思っているのか,また,そうした労働需要側と供給側の思惑に対して,看護職雇用や就業の実態との間にどんな相違が存在するのか,さらに,看護労働市場の構造は今後どのように変化していくか,などである。
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