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はじめに
リハビリテーション医療の分野では,脳卒中や外傷性脳損傷,脊髄損傷などにより障害を持つ患者の社会復帰は重要な目標の1つであり,職場復帰や生活の質の向上を図るうえで自動車運転再開を望む者は多い.道路交通法1)第91条では,「免許に,その免許に係る者の身体の状態又は運転の技能に応じ,その者が運転することができる自動車等の種類を限定し,その他自動車等を運転するについて必要な条件を付し,及びこれを変更することができる.」とある.また,道路交通法施行規則2)第23条(表1)に示すように,障害をもった場合の自動車運転再開を判断する際には,身体機能に関しては適性試験合格基準を満たしていることが大前提となる.つまり,視力,色彩識別能力,聴力の規定を満たし,座席に腰かけることができ,四肢を全廃していない場合は,運転補助装置の使用などにより条件付き免許証にて運転再開が可能となり得る.例えば両下肢切断や両股関節離断で座位バランス低下があっても体幹パットや座位保持装置の使用,シートベルトの追加で運転座席に座ることができれば運転再開は可能である.また,四肢をすべて欠損していなければ,国内でも三肢切断者(両大腿切断,右前腕切断)3)や先天性三肢欠損者(両大腿切断,左上腕切断)4)の報告がある.一上肢残存者では,高額であるがジョイスティックレバー操作で運転できる自動車も検討することができる.上肢切断者の多くは少なくとも1個の補助装置が安全運転には必要であると報告されており5),両上肢切断では6-8),断端部で直接または運転用義手を装着してステアリング操作や手動アクセル・ブレーキ操作をする必要性が生じるため,旋回装置の改良や義手の継手などの改造,アタッチメントの作製などで固定性・操作性を高める必要がある.本稿では,上肢切断者のように個々の状況に応じて工夫が必要な場合の対応ではなく,片麻痺や対麻痺,聴覚障害などをもつ障害者の運転再開に必要な運転補助装置や自動車改造に関して,助成制度も含めて概説する.
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