Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
三島由紀夫の『小説家の休暇』—病跡学的な見解
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.868
発行日 2017年8月10日
Published Date 2017/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201070
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昭和30年に三島由紀夫が発表した『小説家の休暇』(新潮社)は,三島が日記形式で自らの芸術観や創作観を語ったエッセイである.
たとえば,7月5日には,「このごろ外界が私を脅やかさないことは,おどろくべきほどである.外界は冷え,徐々に凝固してゆく」という三島自身の内面の変化との関係で,次のようなクレッチマーの精神医学的な見解が引用されている.「分裂性変質は段階を追って進み,遂に鈍麻した冷たい方の極に達するのである.その過程において氷のように硬いもの(或は皮革のようにごわごわしたもの)は次第に身のまわりを包んできて,過敏なぐらいに感じの強いものが次第に減弱してゆく」.
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