Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
三島由紀夫の老人観―「天人五衰」の本多老人
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.688
発行日 2000年7月10日
Published Date 2000/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109278
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昭和45年に発表された三島由紀夫の「天人五衰」(新潮社)は,三島が自決する直前に完成された文字通りの遺作であるが,その中には三島由紀夫の否定的な老人観をうかがわせる表現が認められる.それは,物語の終末近く,元裁判官の本多老人と彼の養子透との関係を描いた部分である.
80歳になる本多老人は,莫大な資産を所有する身でありながら,「すべてを恐れていた」.本多は,夜の公園での覗き事件を起こして以来,昔の知的な澄明は消え失せ,「何ごとにも卑屈になり,態度はおどおどして,たえず不安に脅かされていた」のである.
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