特集 子供のリハビリテーション
Ⅴ.子供のリハビリテーション・メモ
微細脳障害(Minimal Brain Dysfunction,MBD)
田野 稔郎
1
1神奈川県立こども医療センター精神科
pp.770
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106609
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1.概念とその由来
「知能は正常またはそれ以上で,さまざまな程度の学習あるいは行動上の問題があり,この障害は中枢神経系の機能異常に基づくものをいう.この機能異常は認知・概念構成・言語・記憶および注意力・衝動・運動機能のコントロールなどの面に単独あるいは種々の組み合せで出現する.」これが微細脳障害の定義である.
この概念の由来を見てみよう.教育面でうまく適応しない子どもを,何らかの中枢神経系障害が想定されるもの(外因群)とそのような障害が想定されないもの(内因群)とに大別すると,相互に重なり合う面は多いものの,外因群には多動・情緒不安定・知覚の障害・衝動性・被転導性(些細な刺激により気が移りやすい)・保続傾向などが目立っている.そこでこれらを脳障害児(brain dameged)と称した.ところが,実際に脳に器質的障害が認められる症例(脳性麻痺,水頭症など)に,いわゆる脳障害児にみられる種々の行動特徴がみられるとは限らないという事実もある.そこで,明らかな脳障害を除外するために“微細”という語を冠するようになり,さらに障害(damage)という語にかえて機能障害(dysfunction)が使われるようになった.
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