書評
—鈴木昌樹 著—微細脳障害
有馬 正高
1
1国立神経センター
pp.1302
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204517
- 有料閲覧
- 文献概要
微細脳損傷,または微細脳障害minimal brain dys—function (MBD)という言葉がわが国でも広く用いられるようになってから既に10年になる。MBDという概念には,子供の成長発達を通じての運動,認知,言語,学習,行動などの問題が広く包括されている。それぞれの項目が専門的な理解を必要とし,中枢神経機能や行動の発達と関連してその子供を評価する対象にとり上げられる。しかも,その各々が別個のものではなく,一人の子供のなかに重複して問題を生じやすい。MBDが正しく理解され,それに何も入れられるごみためにならないためには分析的であると同時に子供の全体像を見渡し過去と将来を考える広い見識が必要であろう。このようなことから,MBDが幼児や学童の日常生活や学習との関連で重要と認められながらも,その解明と対応に真剣にとり組む人はきわめて限られていた。
本書の著者,鈴木昌樹博士は、20年にわたり子供の中枢神経機能の特性と,軽重を問わず小児神経疾患を全般的に見渡しながら,MBDの多彩な問題点の一つ一つを堀り下げ続けた研究的実践家であった。本書は著者の多数の論文のなかがら,特に,MBDの概念,症候,成因および微細な運動機能,言語,認知などの検査法についての解説を主体に選んでまとめられたものである。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.