Japanese
English
研究と報告
脊髄麻痺者の機能訓練途上の心身医学的問題点
Psychological Problems in Spinal Cord Injury Patients.
蕪木 初枝
1
,
柴崎 啓一
1
,
大谷 清
1
,
野町 昭三郎
1
,
本田 哲三
2
,
佐野 光正
3
Hatsue Kaburaki
1
,
Keiichi Shibasaki
1
,
Kiyoshi Otani
1
,
Shozaburo Nomachi
1
,
Tetsumi Honda
2
,
Mitsumasa Sano
3
1国立療養所村山病院整形外科
2国立療養所村山病院リハビリテーション科
3国立武蔵療養所精神科
1Department of Orthopedic Surgery, National Murayama Hospital.
2Department of Rehabilitation, National Murayama Hospital.
3Department of Psychiatry, National Musashi Sanatorium.
キーワード:
脊髄麻痺
,
障害受容
Keyword:
脊髄麻痺
,
障害受容
pp.667-671
発行日 1982年7月10日
Published Date 1982/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104783
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はじめに
脊髄麻痺に対する機能訓練に際して,患者が麻痺そのものの回復に希望をもっていることはうたがいない.しかし治療方針は,麻痺症状が固定している場合にはまず「脊髄麻痺者として残存機能を十二分に活用する方法」を修得させることが,訓練指導の第一目標となる.この患者の麻痺回復願望と治療者側の「残存機能強化の訓練指導」の間には「脊髄麻痺に対する治療」という問題を介して大いなるへだたりがあることには,従来あまり注目されていない.
治療者側はある時期に麻痺回復不可能と残存機能強化の正当性,必要性を充分に説明しているが,このような報知が患者の内面に障害受容としてうけとめられるまでには,その時点からさらに相当の期間を要するのが通例である.しかし,残存機能訓練はできるだけ早期に行うことがのぞましく,障害受容の有無にかかわらず,入院の比較的早期から一律に強力におしすすめられる.
こうした時点で生じる治療上の問題点として,思いがけない行動化の暴発,看護的働きかけへの抵抗,抑欝状態,疼痛行動,精神不穏状態,拒食,自殺企図などがみられる.これらのことは患者の心的不安定さと,治療者側(医師,看護婦をふくむ,以下同じ)の日常治療行動の接点にある諸問題のうちでも,とくに検討の余地をのこしてる部分が多いことがわかったので,以下に詳述する.
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