Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ソフォクレスの『コロノスのオイディプス』―当事者の弁明
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.1080
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101645
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かつてフロイトは,ソフォクレスの『オイディプス王』が,それと知らぬ間に自分の父親を殺して母親と結婚する物語であることを一つの根拠に,人間に共通する潜在的な欲望としてエディプス・コンプレックスという概念を提唱した.しかし,紀元前401年に発表された同じソフォクレスの『コロノスのオイディプス』(高津春繁訳,人文書院)では,当のオイディプスがそうしたフロイトの仮説を否定するような発言をしている.
『コロノスのオイディプス』はソフォクレスの遺作で,『オイディプス王』の後日談とでもいうべき物語であるが,父親殺しと母親との結婚という自らの呪われた運命を知ったオイディプスは,その後盲目になり,祖国を追われて娘とともに諸国を放浪する身となったのである.
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