Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「いのちの作法―沢内『生命行政』を継ぐ者たち」―国・地域・自分自身のあり方が見えてくる
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1081
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101646
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報道などで明らかなように,知的障害のある子どもや発達障害のある子どもが激増している.文科省も一定の対策を講じている.2007年4月,これまでの「特殊教育」を,対象枠の拡大を意味する「特別支援教育」へと移行させた.特別支援教育コーディネーターの指名,特別支援教育支援員の配置,研修・啓発の取り組みによって,確かに特別な教育的支援を要する子どもたちの教育に関心がもたれるようになった.しかし,事態の好転はみられず,不登校の子どもや虐待を受ける子どもはなお増え続けている.私が教育現場で特別支援教育コーディネーターとして活動していたときの実感は,これは負け戦だ,というもの.支援を要する子どもたちの何人かを救えたとしても,手の届かない所には,多数の子どもが残っていたからだ.
どうすれば,負けが勝ちに転じるのか.私は,昭和30年代回帰型実践を展開するなら,支援を要する子どもたちの大部分を救えるかもしれないと考えたが,この時代にそんなことは不可能だ.そう思っていた矢先,長編記録映画「いのちの作法―沢内『生命行政』を継ぐ者たち」(監督/小池征人)を見て驚いた.私にとっての夢物語の実践を,「全国・さわうちまるごと児童養護施設事業」と称して,地域ぐるみでやっているではないか.
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