Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ボルヘスの『盲目について』—当事者が語る障害者論
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.1528
発行日 2022年12月10日
Published Date 2022/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202707
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1980年に発表されたボルヘス(1899〜1986)の講演集『七つの夜』(野谷文昭訳,岩波書店)の掉尾を飾る『第七夜 盲目について』は,ボルヘスが当事者の立場から盲目について語った講演である.ただし,盲目と言ってもボルヘスの場合は,「片方は全盲ですが,もう片方は部分的な盲目」で「いくつかの色はまだわかる,緑と青はまだ識別できる」という程度の障害だった.
ボルヘスは出生後徐々に進行した視覚障害のために50代半ばの1955年に「読み手としても書き手としても視力を失ってしまった」のだが,その時彼は「外から見えるもので成り立っている愛する世界を失ったのだから,何か別のものを作り出さなければならない」と,自分に言い聞かせたという.
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