Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
カミュの『ペスト』―障害受容と当事者意識
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系系
pp.686
発行日 2003年7月10日
Published Date 2003/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100805
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1947年に発表されたカミュの『ペスト』(宮崎嶺雄訳,新潮社)には,ランベールという新聞記者が登場する.ランベールは,たまたまペスト流行時にオランに滞在していたため,この街に長期間抑留されることになるのである.だが,ランベールは,「自分はオランには関係のないもので,この町にとどまったりすることが能ではなく,偶然居合わせただけだし,たといいったん外へ出た上で隔離期間を課せられなければならないとしても,ともかく退去させてくれるのが正当だ」と主張し,さまざまな手段で脱出しようとする.彼は,「私はこの町には無関係な人間なんですからね」と訴えて,リウー医師に,ペストに感染していないという証明書を書かせようとするのである.
これに対してリウー医師は,「これはわれわれすべての者が関係のあることです.あるがままのかたちで受けとるよりしようがありません」,「もう今からは,お気の毒でも,あなたもここの者になるわけです,世間みんなと同じように」と説得するが,結局ランベールは脱出までの間,予防隔離所の管理などをして,リウー医師を手伝うことになる.
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