特集 ―当事者に学ぶ―不妊治療を受ける人々の声
不妊当事者のインタビューにみる当事者のリアリティ
白井 千晶
1
1大学教員・社会学
pp.886-892
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100291
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「不妊当事者の経験と意識に関する研究」の目的と経緯
マスコミに生殖医療がテーマの話題が登場しない日はないが,先端医療についてのニュースだったり,特異なケースについてだったり,不幸物語だったりして,多くの不妊当事者の生活実態からかけ離れていないだろうか。識者が生殖医療について語ることは多いが,生命倫理など,「べき論」や思想ばかりで,今ここにある人びとは対象になっていないのではないだろうか。生殖医療の今後のあり方について語られることも多いが,医師がリーダーシップをもっていて,当事者は蚊帳の外なのではないだろうか。また,不妊当事者は,ただ「治療を受ける患者」という医療的な立場だけではなく,配偶者や親や親戚,友人,近隣者,職場のなかで生活し,経験し,悩み,考える生活者であり,これまでのライフコースとこれからのライフコースをもつ,人間なのではないだろうか。
これらの問題意識から不妊当事者を対象に調査を行なったのが,「不妊当事者の経験と意識に関する研究」である。本報告では,2003年と2004年に行なった調査のうち,2004年のインタビューの一部を紹介しながら「不妊当事者のリアリティ」を考えたい。
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