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はじめに
精神障害は近年増加しており,統合失調症の発病率も100人に1人弱の発生率と言われ,決して稀な障害ではない1,2).精神障害に運動障害を合併した場合,そのリハビリテーションは,本人の意思や意欲に依存する部分が大きいため非常に困難となる3).脊髄損傷では,自殺企図による受傷が日本では1.6%を占め,交通外傷,高所転落,転倒,打撲・下敷,スポーツにつぐ6番目に多い数字が示されている4).受傷前より精神障害を伴った脊髄損傷者では,自殺企図や異常体験に支配された高所からの飛び降りによる胸椎から腰椎にかけての損傷が多く,対麻痺に至る報告が多く認められる5-10).脊髄損傷では,精神状態が落ち着いていない場合でも褥瘡の予防や排泄管理が必要とされ,精神的に安定な状況がつくりにくい.そのため,リハビリテーションはこのうえなく困難を極め,治療に難渋する.実際,精神障害を伴った脊髄損傷のリハビリテーションに関する報告3,5,6,10,11)は少なく,精神障害がリハビリテーションに及ぼす影響は十分に評価されていない.
そこで今回われわれは,一般に日常生活動作(ADL)が自立するとされる完全対麻痺12)において,受傷前より精神障害を伴った場合と受傷前後で精神障害が認められなかった完全対麻痺患者とを比較することで,精神障害がリハビリテーションに及ぼす影響を比較検討したのでここに報告する.
神奈川リハビリテーション病院での診療体制について簡単に述べておく.神奈川リハビリテーション病院は精神科医が常駐しているリハビリテーション専門病院であり,精神科指定病棟ではなく,身体的拘束や法的入院が必要な精神障害者には対応不可能である.したがって,開放病棟で入院可能な患者に限られている.入院後は,リハビリテーション科医や精神科医,整形外科医,泌尿器科医,内科医,外科医など,治療に必要な科の医師がチームを作り,外来でなく,病棟での診察を原則とし,担当医として常に病棟で協議できる診療体制をとっている.
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