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在宅医療が注目されてから,訪問診療を中心に行う診療所が各地に増えている.また,在宅療養支援診療所,在宅療養支援病院など,在宅医療の担い手となる医療機関を評価する制度も定着している.この方向性は,重度者の療養や終末期にかかる莫大な医療費用を抑えるために国が立てた政策であったが,それは当事者にとって非常に意義あることで,結果的には在宅療養や在宅死が改めて評価される結果となった.反面,在宅医療を維持することの難しさも囁かれている.在宅医療の機能を維持するためには24時間体制での対応が不可欠であり,そこに関わる医師の負担があまりにも大きい.そのために,複数の診療所での協力体制,大規模病院との連携などが重要となる.現在の在宅医療における最も大きな課題はそこにある.
理学療法は,そのような一線からは若干離れた位置にあり,在宅医療で最も重要な「緊急時」をともすれば見失いがちになる.結果,在宅医療の流れについて行く形になる.医療機関にはケアが不足し,介護事業所には医療が不足しているが,それを埋められるものはリハビリテーションだと言った人がいる.ある意味その通りであるが,医療と介護の実際の境目では,理学療法はぼやけてしまっているのではないか.数年前,在宅診療に取り組む経験豊富な医師に,「在宅療養されている患者様を診るとき,どのように大別して取り組みますか」と質問したことがある.このような奇問に,その医師はすぐに答えてくれた.「療養か緩和かを判断して取り組みます」.理学療法は医師のこのような判断の下で実施するものである.理学療法士はもっと医師に近づき,在宅での療養や終末期を支える一人として,もっと役に立つ取り組みを探さなければならないと考えた次第である.
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