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医師不在の地域では経験を積んだ訪問看護師が重宝されますが,実は理学療法士も経験豊富な人材が求められています.「維持期」とは,あくまでも発症してからの病期別分類であり,その対象者が安定しているという意味ではありません.予防と急性期と慢性期が混在し,患者を取り巻くさまざまな要素を踏まえて総合的に考え,その判断に基づいて理学療法を提供する必要があり,場合によっては中心的な立場に置かれ,他職種にアドバイスすることも多く,簡単ではありません.
今回の特集は「住まいとくらし—理学療法士の環境づくり」であり,主に地域で活躍する先生方の取り組みです.一見すると理学療法とかけ離れているようにみえるこれらの取り組みが,実はきわめて理学療法的な発想から生まれているという点に着目してお読みください.桑山論文では,脳卒中患者が自宅で新たな生活をスタートする際に,理学療法士が本人や家族に寄り添い,身体だけでなく心の動きに合わせている様子もあり……,そこに専門性を感じます.佐藤論文では老々介護の要介護高齢者の生活の様子が紹介されています.一口に「退院支援」と言っても,よりよい生活に行き着くためには,多くの人間が繰り返し,かつ長きにわたってかかわる必要があるとわかります.優しくなければ続きません.延本論文からは,脊髄損傷者の心身機能を十分に把握している理学療法士だからこその細やかな支援が伝わります.中村論文からは,重症児デイサービスの管理者という立場から,障害児の心身だけでなく,家族とのかかわり,さまざまな社会背景など,すべてを包み込んで子どもたちの成長を見届けている様子が伺え,感銘を受けます.白銀論文では,理学療法士の役割について,住宅改修や福祉用具の導入提案だけでなく,制度を横断的に活用する際の「調整役」として……,という言葉が新鮮に感じられました.城岡論文では,障害者や高齢者の生活は住まいだけでなく町ぐるみで考えるもの,ということをシンガポールでの経験を踏まえ,より具体的にお書きいただきました.
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