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理学療法士という国家資格は職能団体を有し専門性を必要とする職です.一般的にはスペシャリストは狭く深く,ジェネラリストは広く浅くであり,理学療法士は専門職なので狭く深く—そのほうがわかりやすいかもしれません.理学療法士は疾患に重点を置く医師や看護師とともに技術を提供しますが,それだけでは終わらず退院後の生活につなげる専門家です.医師の第一線が「救急」なら理学療法士の第一線は「退院」かもしれず,患者中心で考えた場合,狭く深い“スペシャル”では解決できないことがたくさん存在します.どんなに“スペシャル”な職人でも,むしろ“スペシャル”であるほど裾野を広げなければなりません.
植松光俊先生らには日本理学療法士協会の生涯学習制度を通して理学療法士の継続教育について非常にわかりやすく解説していただきました.理学療法士の継続教育において大きな比重を占める,よく検討された制度であるとあらためて認識できました.臼田滋先生らからは,プロフェッショナリズムの概念などの知識から,継続教育の現状や教育機関の役割などについて幅広く述べていただきました.髙橋明美先生からは中枢神経疾患理学療法のプロフェッショナル育成について,卒前教育,卒後教育,生涯教育に分けて述べていただきました.福井勉先生からは整形外科疾患分野について述べていただき,「プロフェッショナル育成には症例を通じた実学的アプローチが必要である」のくだりは特集の核心をズバリと表現しているように感じました.神谷健太郎先生からは脳卒中や整形外科疾患と比較すると非常に少ない循環器疾患分野のプロフェッショナル育成について,(今後ますますその数を増やすことに期待して)述べていただきました.呼吸器疾患分野の高橋仁美先生は実際に病院でプロフェッショナル育成に取り組んでおり,体系的なだけでなく現実的な内容で述べていただいており,必見です.在宅理学療法を担当した小山樹先生は介護分野の事業所を展開するなかで,さまざまなものを現実的視点で切り開いてきたまさしくプロフェッショナルです.
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