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退院の条件として「トイレ動作が可能になれば連れて帰りたい…」と言う家族の声をよく耳にする.時にそれを可能にするための理学療法が提供される.トイレは1日に何度も使用するため,毎日清潔に掃除し,臭いを消し,消臭剤や洗剤やペーパーがなくなれば買い物へ行き,取り付けなければ不衛生になる.家族の誰かがそれを担っており,トイレ動作が可能になって連れて帰れるのは家族がいる場合のことで,独居なら何らかの支援がなければ帰れない.毎日バランスのよい食事をして,体を清潔に保ち,掃除をして,寒暖に合わせて家を管理する.患者が退院した後の生活で,それらが長期間継続できるか否かを見極める.患者の退院後の生活を理解するためには,自らも「生活者」として成長しなければならない.
さまざまな要素が複雑に絡み合う退院支援で,理学療法士はどの部分に力を注ぎ,どう動き,何を解明していけるか….複雑であっても明確にできる部分はみつかるはずで,そうした期待を込めて本特集を企画した.退院支援看護師は一定の規模の病院には必ず配置されているのに対して退院支援理学療法士はメジャーではないが,特集のはじめに退院支援理学療法士の役割を述べた.配置した後の効果は予想外に大きく,今までとは異なる方向から理学療法士の教育について考えることができた.また,東京大学医学部附属病院のような特定機能病院でも,短縮化する在院日数のなかで,非常に短い期間に早期から在宅支援が行われており,その概要について安井健先生らに述べていただいた.いわゆる退院支援を目的とする医療機関については,地域包括ケア病棟の退院支援を穐本宇未先生に,回復期リハビリテーション病棟の退院支援を井出伸二先生にご執筆いただいた.そして,退院後の在宅生活を知り得る先生方からの退院支援の着目点について,訪問理学療法では伊藤卓也先生から,外来理学療法では清水暁彦先生に述べていただいた.
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