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「地域包括ケアシステム」は形の見えない気体のようでわかりにくい.明らかなことは,「現状の制度の範囲内で各市町村がそれぞれに頑張りなさい」というわが国の意向である.日本の人口は減少を示し始め,政策は「基盤整備」から「システム」という見えないものに向いてきている.そのなかで理学療法士にとっては初めての地域包括ケア病棟という包括報酬の病棟が出現した.患者側からすれば,入院条件を問われることなく容易に入院でき,十分なリハビリテーションを受けられ,日々変動する高齢者の健康状態に見合った画期的な病棟と言える.
藤森研司先生には入院医療の調査検討委員の立場から地域包括ケア病棟創設の背景や現状などについて述べていただいた.医療の変遷,その社会背景などを幅広い視点で述べられており,地域包括ケア病棟だけでなく今後の理学療法を読み解くうえでも有意義な一稿である.宇都宮啓先生は病棟にまつわる地域包括ケアのみならず,今後のリハビリテーションの方向性も示唆している.ぜひ読み込んでいただきたい.小磯寛先生は都市部における地域包括ケア病棟について,その運営状況のみならず地域連携などに関する病院の幅広い取り組みについて述べられている.地域包括ケア病棟を新設する病院の参考となる貴重な内容である.三浦豊彦先生は,地方の中核病院における地域包括ケア病棟について述べている.高齢者が多いにもかかわらず,人材確保の問題も含めあらゆる資源に乏しい地域事情ながら,画一した基準で病棟を運営しなければならない病棟のありかたに一石を投じている.湯口聡先生は,循環器疾患専門病院における地域包括ケア病棟について述べられている.専門病院ながら退院後の生活を踏まえた幅広い取り組み,先の二人の先生方も同様であるが,患者の退院後の生活を見据えた視野は,他の専門職からは群を抜く理学療法の専門そのものであると確認できた企画となった.
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