連載 病院組織コーチング・6
コーチングによる人材・マネジャー育成
岡本 智子
1,2
1東北大学病院診療技術部
2東北大学病院栄養管理室
pp.904-906
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210365
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医療の現場では,日常業務で患者の急変や手術など緊急かつ重要度の高いものは優先順位が上になる一方,部下の育成,チーム医療連携の強化など組織の強化,院内の風土変化に対する取り組みは,重要度は高いとわかっていても緊急性は低くなりがちである.しかし,放っておけばおくほど後にかかる育成期間は長くなるわけで,将来を見据え,時間をかける価値を認識して早い段階からとりかからなくてはならない.特に多職種で構成されるチームで動くことが不可欠な臨床の場で“人を育てる”際には,知識やスキルを習得させるだけではなく,組織の中で自らが主体的に行動でき,自分自身を活かし,組織力を上げるための力を備えさせることが重要となる.そのためには人との関わりの中でコミュニケーションを上手に取ることが必要となるが,この人との関わりの部分にコミュニケーションスキル・コーチングが活用できる1).
コーチングとはコーチ(相手の目標達成を支援し共に歩む人)がクライアント(コーチングを受ける人:対話相手)の目標達成に必要な能力やスキル,ツールが何であるかをクライアント自身に気付かせ,備えさせることで自発的な行動を促進させるコミュニケーション・スキルである.さらにクライアントの持つリソースを最大化し,目標達成に向かうスピードを上げることも可能にする.コーチング手法を使う上でポイントとなるのは,「クライアント自身が気付かない思い」を引き出すために,コーチが“相手の成長を願って”関わることである.コーチングが機能する関係性には信頼関係も築かれていくため,組織力がさらに強化されるという好循環が生まれる.
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