特集 臨床判断能力の育成 優れた実践と評価に向けて
スポーツコーチングを取り入れた臨床判断能力の育成
佐藤 尚治
1
1イムス横浜国際看護専門学校
pp.646-654
発行日 2024年12月25日
Published Date 2024/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202322
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臨床判断能力は現場でしか獲得できない?
この数年、看護教育の世界では「臨床判断能力を看護学生が身につけることは可能か」といった議論がされてきました。私は常々「学生単独では極めて困難であるが、優れた実践者と共に行動することで可能となる」と私見を述べてきました。これは臨床判断能力の獲得においては、臨地実習という実践現場で臨床指導者や看護教員が、学生と共にした看護実践場面を思考発話し、学生自身の体験に看護師の思考を付加して省察を繰り返すことで臨床判断能力の一端を垣間見せ、学生はそれを臨床知として蓄積していくことで、臨床判断を行うための要素が身につくと考えたためです。
しかし一方で、臨床判断能力を獲得することは臨床現場でしかできないのだろうかという疑問も持ち続けていました。スポーツ競技の世界には「試合が試合を教えてくれる」という格言があります。あるプロのコーチを対象としたセミナーで参加者がこの言葉を持ち出した時、世界的コーチエデュケーター(コーチのコーチ)であるダグ・レモフ氏はこう発しました。「(試合は)不公平な教師なのだ」―さらに、ダグ氏はこのように続けました。「選手にプレーさせるだけでは、理解できる者も、できない者もいる。しかし、理解するための(実践の)フレームワークを与えれば、選手たちはそれに適応し、応用することで、より良い問題解決者になる」1)と。
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