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はじめに
老人対策の基本理念として「老人を単に弱者として保護するのではなく,地域社会の正当な一員として,地域社会の中で自立して,生き甲斐のある生活をおくれるようにすることである」と東京都では規定している.
老人の地域リハビリテーションを考えるときもその理念は全く同じである.
本稿では,実際に都内の各地域で実施されている老人に対する地域リハビリテーションの現状を踏まえながら考えてゆくことにする.
地域リハビリテーションの対象となる老人は何らかの医学的原因により,身体的機能障害があり,そのために生活場面における諸動作を,自立して行うことが不自由である.つまり,家庭において生活動作を遂行するために必要な身体的基本動作に不自由のある肢体不自由老人であり,障害老人なのである.
このような肢体不自由な障害老人は,生活者としての生活体系そのものに破綻をきたし,日常生活動作(ADL)のある部分または全体の動作を身体的に自立して遂行することが困難であり,あるいは不能になっている.
人間が生活するということは,朝起きてから,夜寝るまでの時間帯を,目的動作を遂行するため一連の諸動作を連続して行うということである.生活自体が動作の連続によって成り立っているのである.
生活内容を構成している諸動作のうち基本的な動作と言われる狭義のADLさえも破綻してしまう.それは身体的な姿勢の変容であり,移動動作の破綻によって始まるのである.
厚生省の調査(昭和50年)によると,全国で寝たきり老人は44万人で,そのうち特別養護老人ホームに入所しているのが5万5千人であると報告している.38万人は家庭にいて家族がほとんど面倒をみているのである.
寝たきり老人の状態は本人自身の問題であるだけでなく,家族に係わる深刻な問題になり,それは地域全体の社会問題になってくる.
医学的には,寝たきり老人の大半は脳卒中後遺症によるもので,半身不随の片麻痺を中心とした障害をもつ老人である.
このような障害老人の地域リハビリテーションの考え方および方法について検討してみることにする.
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