巻頭言
老人リハビリテーションの心
森 幹郎
1
1厚生省老人福祉
pp.781-782
発行日 1974年11月10日
Published Date 1974/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103224
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昭和47年に厚生省(社会局老人福祉課)が行なった「全国老人実態調査」によると,「半年以上床につききり」の60歳以上の老人の数は34万人にのぼるものと推計されている.これより先,昭和28年に内閣総理府と郵政省とが行なった「老後の生活についての世論調査」によっても,「病臥中」の60歳以上の老人の数は34万人と推計されている.この2つの調査における「半年以上床につききり」と「病臥中」とは定義が同じではないから,単純に比較することの愚は避けなければならないが,それにしても,この20年の間に,絶対数はほとんど減少していないが,その老人人口に対する割合が5%から2.9%へと減少しているのはまことに喜ばしいことである.また,いずれの調査においても,そのほぼ半数は脳卒中の後遺症によるものであることが明らかにされている.すなわち,ねたきり老人のうちの半数は,わが国リハビリテーション医療の後進性によって,ねたきりにされたものと極言することもできるのである.
わが国の医学は,世界的にも優秀なものときいてきたが,こうした多くのねたきり老人の存在を数字で示されると,その水準が高いものであることは信ずるとしても,それは,ややともすれば疾病そのものの研究及びその治療に重点がおかれ,治療の効果もなくなった人,例えば,ねたきり老人そのものに着目するという点においては,それほど積極的ではなかったのではないか,と思われるのである.
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