特集 今日の耳鼻咽喉科
日常診療に必要な知識
薬物
制癌剤の選択と用法
佐藤 武男
1
1大阪府立成人病センター
pp.809-814
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208973
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I.緒言
頭頸部癌と称するもののなかには,特色のある多くの癌が包含されていて,互いにまつたく性格が異なつている。したがつて手術治療にしても,化学治療にしても同一には論じられない。頭頸部癌の80%は扁平上皮癌ではあるが,部位により特異性があり分化の程度も種々である。上顎癌,喉頭癌,上・中・下咽頭癌,口腔・舌癌,唾液腺癌,悪性リンパ腫,甲状腺癌などそれぞれ特有の興味ある性格を持ち治療方法もまつたく異なっている。
最近20年の研究成果からみると,治癒率の向上を目標として治療方法の確立が行なわれつつある。その方向としては放射線治療,手術治療,化学治療の3者,および最近では免疫治療の概念を導入した4者の集学的な治療方法が確立されつつある。
化学治療法とくに抗癌剤の使用に関しては多くの試行錯誤を繰りかえしつつ現在に到つているもののなお頭頸部癌に関してはこれからの研究が期待される段階である。多種類の制癌剤の選択,用法,多剤併用療法,集学治療における抗癌剤の役割,さらには癌化学療法の効果判定法などについて,各研究者は試行錯誤の状況であつて未だ決定され同意されたものはないといっても過言ではない。ただ上顎癌における局所動注,悪性リンパ腫における多剤併用療法などはその有効性が証明されている。しかしその他の固形癌については今後の研究課題であるといえる。
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