トピックス 頭頸部癌に対する制癌剤の選択
扁平上皮癌に対する制癌剤の選択
小宮山 荘太郎
1
1九州大学医学部耳鼻咽喉科
pp.187-192
発行日 1990年3月20日
Published Date 1990/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900033
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はじめに
現在癌治療の中心となっているのは外科的治療,放射線治療,抗癌剤投与を主とした化学療法であろう。頭頸部癌の大部分は扁平上皮癌であり,原発巣,局所リンパ節(TN)に限局しているときは外科的治療と放射線治療とでコントロールされる症例が多い。しかし遠隔転移(M)が発見された時から上記の治療法から化学療法に切り替えざるをえないのが現状であろう。このように一般的には癌がもはや局所に止まらず体内組織に播種され増殖を起こすような場合に重要な意味をもつのが抗癌剤による化学療法であり,最近注目され,さらに応用されてきた免疫療法であろう。
とは言っても頭頸部癌の治療は他の臓器のそれとは異なり機能のみならず形態の保存が必要である。手術で癌腫を広範に摘出した後,如何に美しく形成手術が出来ても,病気以前の姿とは異なり,患者の心からの満足を得ることは難しい。ここに頭頸部癌に対する治療法の独自性がある。かって佐藤は上顎癌に対して3者併用療法(手術と放射線治療と化学療法をそれぞれ必要量の1/3ずつ施行し機能と形態を出来る限り保存しようとした治療法)を提唱し,その有効性を報告したが,これは頭頸部癌だから必要であった治療法ともいえる。小宮山はRadiation Therapyの効果を増強さす目的でVitamin Aと5—FUを併用するFAR療法を報告したが,これは喉頭癌患者の喉頭全摘出術を少なくして,音声の保存を第一と考えた結果である。更に外頸動脈領域の腫瘍に対しては5—FUの動注+Radiationで優秀な成績を収めている施設もある。
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