Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
Ⅰ.はじめに
耳鼻咽喉科医が遭遇する頭蓋内疾患は所謂耳性頭蓋内合併症と称して,総て,中耳炎或は中耳コレステアトームを起点とするもので,脳膿瘍,静脈洞血栓,S状洞その他の脳静脈周囲膿瘍又は脳膜炎等であつて我々は過去に於てはこれ等合併症にはしばしば遭遇し,又各種抗生物質の発見せられざる時の事とて興味をもちつつ悪戦苦斗して,これが治療に従事せるものであつた。然し近代医学薬学の急速なる進歩により,かかる重篤なる症例にぶつかる機会は甚だしく減少の一途をたどつているのが現状である。
然るに我々は,かかる耳性の頭蓋内合併症に非ずして,頭部外傷より発生せる横洞S状洞周囲膿瘍の一例を経験し,然も,かかる例は耳鼻科の成書或は脳外科の一,二の成書にも記載を見ないので,まことに稀有なる一例ではないかと感じ,茲に報告して,先輩各位の御批判並びに御教示を賜りたいと存ずる次第である。
The patient was traunatized in the occi-pital region from an external head injury and resulted in a local abcess formation. From this superficial abcess a complicating infection of lateral and sigmoid sinuses occurred most likely through a linear fracture of the cranium in this region. The recovery of the patient was uneventful through operation and the use of antibiotics.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.