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あとがき
西端
pp.92
発行日 1961年1月20日
Published Date 1961/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202608
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北村教授の萎縮性鼻炎に関する論文は力のこもつたもので多くの考えさせるものを含んでいる。或る角度から見ると,高橋式鼻内整形手術と正反対の原理から成り立つている。即ち高橋法は固有鼻腔の粘膜を可成り犠牲にしても副鼻腔の粘膜を保存しようとしているが久保法は副鼻腔粘膜を利用して固有鼻腔の粘膜の荒廃を補おうとするからだ。併し前者の対象は主に肥厚性鼻炎であり,後者の場合は萎縮性鼻炎であるから当然とも思えるがそう簡単に割り切る訳に行かない。もつと追及しなければならない何物かが隠れている。それは末だなんだか判らない。反対の立場から掘り下げて行く中に何処かでその謎が解かれるであろう。臭鼻症のあの不快や苦悩は単に鼻腔が広過ぎるからではなく,粘膜や骨に永続する謎の萎縮を伴う炎症によるのであろう。腫瘍の手術で鼻腔がガラン洞になつてもあのような苦痛は起らない。鼻甲介粘膜の生理的機能がなくなつている気管切開孔から呼吸している人が案外大した故障なく生きているのは何故であろう。判らない。又上洞の粘膜を下鼻介に縫いつけただけで何故臭鼻症の謎の炎症が軽快するのであろうか。不思議と云うより他ない。謎は深い。北村教授がその中何かを摑んでくれるであろう。
編集の都合で巻頭論文に入れてないが鈴木君等の悪性腫瘍とステロイドホルモンに関する研究は重要である。転移を起す恐れがあると云われているからだ。この研究がどれだけ此の点を掘り下げたと云えるか疑問であるが一応観察はしていると思う。
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