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緒論 皮膚,粘膜,網膜等上皮組織で覆われている器官には電位差が証明される.それは上皮は構造上表裏の差があり,それが電気的な相違として測定されるものと考えられる.此の生物電気現象の基礎としては,ペルンシタインの膜説がある.これは原形質膜が或るイオンに対して不透性なる場合には膜の内外に電気的二重層を生じて一定の電位差を生ずるというのである.皮膚と皮膚,又は粘膜と粘膜との間では無傷の場合はかゝる現象は起らない.しかし皮膚粘膜の間には当然電位の差がみられる.さて病的粘膜は健康粘膜と比較して如何なる電気的変動を示すであろうか.Schmidtm-ann.は組織のPHを測定し,上皮細胞は基底細胞よりPH高きことを報告し,Schade Haipert,Neukirchは皮下電極を考案し,ガス連鎖法にてPHを直接に測定し,人体正常組織に於て皮下組織はPH7.09〜7.29筋肉内はPH7.07〜7.09なりと報告し,其の他Girgoraff. Hennig. Herma-nnsdorfer.加藤の報告によると各臟器は同一PHを有すると結論されたが,尾河氏は各動物臟器のPHを測定し各臟器のPHは7.0〜7.03であり又同一臟器も部位によりPRを異にすると報告している,Schmidtmannは生活細胞体内のPHを顕微鏡下に測定し同一臟器同一組織は動物の種類に関係なく同一PHを示し,同一動物でも組織の機能作用異なるに従いPHは異なると発表し,一般には上皮組織は間質組織に比してPH高きことを報告している.Schade及Marchioniniは皮膚最上層は酸に対して強い緩衝能を具へ〔H〕イオン落下を招来せしめて皮膚層内に酸の拡散するのを制限すべく作用する事を明とした.Mittermaierは慢性上顎洞炎の洞粘膜に於て最もPH高きは正常の粘液を分泌する上皮細胞,次は拡張せる淋巴腔を有する浮腫状息肉状部にして,比較的アルカリ度の低いのは炎性浸潤つよき所と述べている.これに対して副島は表面より深部に移るに従いアルカリ度を減少すると報告している.更に慢性上顎洞炎の潴溜液のPHに就いては吉田の詳細なる報告がある.慢性上顎洞炎潴溜液に於て其のPH及び外観的性状を支配するものは其の主成分たる膿,粘液,滲出物の3要素の混合であると記述し,又Dahi及Pugatschは上顎洞を開き,潴溜液を排除した後洞壁を内外前後下壁に区分して其の粘膜について組織学的研究を行い内及び下壁粘膜が破壊機転を蒙ること最大にして,上顎洞炎の性状は鼻腔粘膜の性状,及び生体の体質的要約によりで支配されると結論している.更に前記吉田は其の結論に於て潴溜液PH=6.6±0.3のものは一般に黄緑色濃厚で粘液成分乏しく殆んど純膿樣で粘膜は所謂浸潤型であり,PH=8.0±0.1のものは黄橙色乃至琥珀色透明粘液樣で膿成分なく,粘膜は浮腫型である.又PH=7.4〜0.3のものは帯黄緑色乃至黄色粘液樣分泌物で粘膜は混合型であると云つている.以上の先人の業績にもみられる如く慢性上顎洞炎にて炎症性変化を起し且正常と異なるPH液に浸されている粘膜は又正常と異なる電気的変化を惹起すべきであると思いPotetiometerに依り実験したので報告する.
ABE and associates point out by use of poten tiometer bioelectrity in the mucous membrane of the maxillary sinus both, in diseased and in normal conditions. In chronic maxillary sinusitis the electri-cal potential was raised to 0.21 volts wheras in the normal this value was no larger than 0.19 at the most. Greater the degree of inflammatory involvement the greater was the value shown. And at recovery of the sinusitis following surgical procedure the electrical potential approached that of the normal sinus.
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