特集 副鼻腔炎の病理と治療
歯性上顎洞炎
堀口 申作
1
1東京医科歯科大学
pp.943-954
発行日 1956年12月25日
Published Date 1956/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201691
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まえがき
歯性上顎洞炎というのは歯の炎症が原因となつて,之に隣接する上顎洞に炎症を発来し,ひいては副鼻洞炎となつた場合である。これには,定形的でどう考えても上顎洞炎の原因が歯以外に考えられないというものから,上顎洞炎と歯牙との関係を証明することが可成むずかしく,果して両者の間に関係があるかないかわからないけれども,関係がないと言い切るには更に面倒な証明を必要とするものまで,多種多様であつて,私の希望は,これらの多様性を一つの表などにまとめ上げてこれら多くの症例の中の一部に存在する共通性を抽出するよりも,むしろその多様性をここにさらげ出して次の出発の基礎としたい考えの方が大きい。というのは歯性上顎洞炎の研究は少くとも私にとつては,単にこの疾患の中の定型的なものに対する記載とか研究とか治療とかいうことだけではなく殊によると慢性上顎洞炎或は慢性副鼻洞炎という。不可解な疾患の原因究明に関する一里塚となるかも知れないと考えているからである。この意味では,私の歯性上顎洞炎の研究はまだ漸くその緒についたばかりであると言わざるを得ない。
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