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2019年3月号において好評を博した特集「Spine Neurology」の続編とも言える「Lower Spine Neurology」が満を持して発刊された。私自身も非常に楽しみにしていた特集である。「Spine Neurology」のあとがきで,企画をされた桑原聡先生は「各論文に共通するコンセプトは,脊椎疾患の診療・研究には脳神経内科医が積極的に関与すべきであり,あくまでも正確な神経学的所見を核として画像診断との一致や乖離を解釈するという点である」と述べておられるが,正鵠を射るコメントであり,本号でもあらためてその大切さを確認できる。
「正確な神経学的所見」を取るトレーニングを若い医師や学生に行うことは非常に大切である。しかしそれは現在,極めて困難を伴うものになってしまった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が状況を大きく変化させた。医学教育が専門の先生方と議論をしても,COVID-19で最も大きな影響を受けたのは神経診察の教育ではないかと異口同音に述べておられた。まず脳神経内科において極めて重要な問診のトレーニングが,患者さんとの対面が制限されているため困難となっている。さらに一定時間,密な接触を要する神経診察もまったく困難である。慌てて神経診察用シミュレーターが世の中に出回っていないか探してみたものの一切なく,臨床実習でできることは動画を見てもらうことや,神経所見をもとに解剖学的診断を考えるトレーニングが中心となる。この非人間的な教育状況はneurophobia(神経恐怖症)を助長する可能性がある。コロナ禍において私どもの教室で行った教育の工夫は,リモートでの学生参加を意識したカンファレンス,抄読会のライブラリー化,反転授業などで学生と医師のつながりの強化を図ったものであるが,対面による問診と神経診察のトレーニングは何もできないままである。ただし学生にはワクチン接種が済んで免疫が備わればあらためて実習の補修をしたいと話している。
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