- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今年も脳神経内科の専門医試験が終了し,199人の専門医が新たに誕生しました。リタイアする先生方の数を差し引きすると遅々とした増え方で,日本に脳神経内科専門医が充足するまでにはいまだ道遠しという感がありますが,毎年200人前後の新専門医がコンスタントに誕生しているのはとてもよいことだと思います。私は10年以上この試験に問題作成の委員として関与しており,専門医認定委員長を拝命してから今年で3年目です。1〜4月頭まで平均7回の日曜日全日を問題作成に充てるというハードな委員会で,7月に面接試験が終わると本当に肩の荷が下りた感じがします。委員会の席上ではそれぞれの専門分野の先生が常識と思っていることとその他の先生との認識の乖離が新鮮で,委員会で発せられる専門家の意見はとてもよい勉強になります。この委員会を通じてつくづく感じることは脳神経内科の守備範囲の広さ,common diseaseから難病まで関わる疾患の多彩さで,この1点だけをとってみても基本診療科としての要件を十分満たしていると思います。先生方はどのようにお考えになりますでしょうか。
今月の増大特集はALSです。表紙には,ALSに罹患しキャリアが終焉したニューヨーク・ヤンキースのスラッガー,ルー・ゲーリック(Henry Louis Gehrig;1903.6.13-1941.6.2)のカリカチュアをイラストレーターの長場 雄さんに描いていただきました。米国でこの病気が「ルー・ゲーリック病」と称されて一般の市民にもよく理解されていることは読者の皆様もよくご存知と思いますが,アイス・バケツ・チャレンジなどと並んで,この疾患を一般の人々にもよく理解していただこうという努力は今後日本でも必要なことだろうと思います。既にALSを発症していたと考えられる1938年のシーズンにも,ゲーリックは打率.295,29本塁打,114打点という優秀な成績を残していますが,アスリートであること,頭頸部に外傷歴があることがALSのリスクを増すという説はおそらく真実であろうと思います。外傷とTDP-43蓄積との間のリンクは今後どのように解明されていくのでしょうか。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.