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あとがき
神田 隆
pp.440
発行日 2019年4月1日
Published Date 2019/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201293
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病歴を丹念に取る,そして患者さんの身体所見・神経所見を漏れなく診察する,脳神経内科の基本中の基本です。この1月に私の神経学の師匠(塚越 廣東京医科歯科大学名誉教授)が亡くなりました。学生時代に私が神経学を志したのは,神経学的診察によって“自分の手で”診断まで至ることのできる格好よさに惹かれたのが第1歩で,師匠がポリクリで口を酸っぱくして言っていた病歴の重要性に魅力を感じたわけではまったくありませんでした。しかし,実際に医者になって患者さんを受け持ってみると,診察と同じくらい,時にはそれ以上に正確な病歴聴取が大切であることを実感する毎日であったことを思い出します。一方,皮膚科のポリクリです。初日の外来で,当時の香川三郎教授(真菌症の大家でした)に開口一番,「病歴なんか取るな」「今見えるものだけで診断しろ」と言われたのを今でも鮮明に思い出します。若干腑に落ちないものを感じつつも,それぞれの指導者の教えに忠実に,適宜スタンダードを変えて実習を乗り切っていましたが,今になって振り返ってみると,お二方の教授はどちらも臨床の真実をわれわれに教えていたのだとつくづく思います。
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