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新型コロナウイルス感染症の行き先はまったく見えない状況が続いています。この原稿を書いている7月末の段階で国内の感染者はじりじりと増加の一途をたどり,国内外の学術集会はリアル開催を取りやめてwebでの発信に続々と切り替えています。本誌をお読みの先生方も日夜大変なご努力を重ねておられることと存じます。重症患者を治療する・救命するというだけではなく,ご自身やご家族の健康にも並行して留意しなければならないという特殊状況はいつまで続くのでしょうか。また,この新型コロナウイルス感染症は,神経系に高頻度かつ広範に障害をもたらすことが知られるようになっており,新たな文献が毎日のように次々と出版されています。本誌も緊急特集として,新型コロナウイルス感染症と神経系を扱った号を10月発刊します。この特集号がいまそこにある課題としてベストセラーになるのか,こんなこともあったよねと過去の話題になるのか,後者であることを切に願います。編集主幹として雑誌がよく売れることは嬉しいことではありますが。
私個人のことを書きますと,日常業務に加えて病院内や学生教育でのコロナ対策にかなりの時間と労力を割く毎日です。反面,国内外の出張が事実上0となり,週末はほとんどステイホームしています。この10年余りの状況とは大きな様変わりです。連日連夜臨床現場でコロナ感染症と闘っている先生方には大変申し訳ないのですが,これまで衝動買いして積んでおいたセット物のCDをゆっくり聴く時間が持てて幸せな気分になっています。ついこの前もパイヤール室内管弦楽団の133枚組というものを購入して放置していました。私が学生時代に非常に人気のあった演奏団体で,最近の古楽の新しい波には乗り遅れた旧世代に属するグループですが,1枚ずつ,至福の時を味わっています。価格は1万5千円あまり,CD1枚当たり110円強というとんでもない価格設定で,パイヤールさんに申し訳ないような気分ですが,LP時代に貧乏学生には手が出なかったこのような宝が簡単に手に入る,とてもよい時代になったと実感しています。私は旧世代に属する人間なので音楽はCDで,という形にいまでも固執していますが,医局の若い先生などは,昔の演奏はネットでほとんど無償の形で手に入れているようです。若者の所得が少ない,貧困だとメディアは書き立てますが,彼らは私の世代よりもずっと豊かな精神生活を享受しているようですね。
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