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あとがき
神田 隆
pp.956
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201111
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テクノロジーの進歩は過去のスタンダードをどんどん退場に追い込みます。DVDレコーダーが初めて市場に出た頃は,映像情報を保存する外部ディスクとしてDVD-RAMが第1に挙げられており,記録面の保護という意味から,type 2,4と呼ばれる外殻付きのDVD-RAMが推奨されていました。私もせっせとこのタイプのDVD-RAMで保存を進めていましたが,現在,殻付きDVD-RAMを再生できるハードウェアがほとんど皆無となっており,殻から取り出したデータをブルーレイディスクへと移送する作業を細々と開始しています。
10数年前にアナログBSから記録した映像が大部分で,改めて観てみますと,指揮者やピアニスト,オーケストラのメンバーが若々しいのに(当たり前ですが)驚かされます。現今のハイビジョン映像に慣れたせいでしょうか,最初は数段落ちる解像度が目につきますが,しばらく観ていると画面の粗さはほとんど気にならなくなってきます。貧弱な音情報に対しては,われわれの耳は比較的速やかに“慣れる”ことが可能です—トスカニーニやコルトーの古い録音の“音”が終始気になって,表現されているものが頭に入らないことはまずないでしょう—。これに対し,視覚情報は馴化が難しいというのは定説のようですが,ストレスなく過去の財宝を楽しむための脳の可塑化のメカニズムは,視覚情報に対しても厳然として存在するということでしょうか。
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