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「競争社会と共存社会」
トランプ米国大統領が就任して世界が大きく変わりつつあるのかもしれない。地球温暖化という科学的事実もどのように扱われるのか重要閣僚ポストの人事を通して世界がみつめているようである。同大統領は実業家出身らしく米国民の雇用促進やビジネス活性化には定評があるようで世界市場での株価の反応も良好である。某内閣総理大臣が蕪大根を両手に持って,上がれ上がれと踊っても簡単には市場は反応しなかったことを考えると,客観的にみて,新大統領は目を見張るパワーがあるといえよう。ビジネスで成功と破綻を繰り返し経験してきた経歴からは,得がたい自信と確信を持っているかのごとく迷いはなさそうであり,今後の政策に反映されていくように思われる。すべての発想と政策をビジネス的に推進していく様子から,計算のできない大変な競争社会になりはしないかと自分に自信のない編集子は杞憂している。短期的な予測と収支では,それなりの成果が得られるかもしれないが,長期的な視点からの検討も深められることを願っている。
その昔,米国でディズニーワールドやディズニーランドに行ったことがある。まだ,日本で東京ディズニーリゾートやUSJが開園されていない時代のことである。各アトラクションには長蛇の列をつくることは少ない時代であったにもかかわらず既に障害者用に独立した入り口があり,すべての動線に段差もなくスロープ仕様となっていた。明らかに少数派である障害者への行き届いた配慮に触れたとき,われわれ日本は米国に勝てないと打ちのめされた感覚に襲われた。単純な競争社会にはあり得ない共存社会がみごとに実現されていたからである。人の一生の始めと終わりは,家族や社会の支えがないと生きていけない。成人して定年までのいわゆる現役世代であっても,労働できない人をも仲間として受け入れる社会,それが動物と違った人社会であるはずである。ここで福祉至上主義を議論しているのではないが,福祉はサービスを受ける人のためだけではなく,健常者を含む社会のために必要なしくみである。
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