Japanese
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連載 神経学を作った100冊(41)
ガル,スプルツハイム『中枢神経系全般,特に脳についての研究』(1809)
One Hundred Books which Built up Neurology (41)-Gall FJ,Spurzheim G "Recherches sur le Système Nerveux en général,et sur celui du cerveau en particulier" (1809)
作田 学
1
Manabu Sakuta
1
1日本赤十字社医療センター神経内科
1Department of Neurology,Japanese Red Cross Medical Center
pp.554-555
発行日 2010年5月1日
Published Date 2010/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100690
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フランツ・ヨゼフ・ガル(Franz Joseph Gall)(Fig.1)は1758年にドイツのティーフェンブロンに生まれた。ここは,ストラスブールとシュトゥットガルトの中間にあり,シュバルツバルトに近い緑多い町であった。彼は子どもの頃から,自分自身と兄弟・姉妹や学校の友達との違いについて考えにふけっていた。2人の友人は,その内容を理解せずにものごとを記憶することができた。一方,彼はものごとを深く考えることと理由づけることが得意だったが,記憶は苦手であった。この子どもたちはいずれも眼が際だって大きかったことがガルに記憶と眼との関連性を考えつかせたという。ガルは成長してストラスブールで医学を学んだ。23歳のときにウィーン大学に移り,そこで学位を得た後,そのままウィーンで医師として開業し,盛業だったという。
ガルは49歳のときにパリに移り住んだ。既にウィーン在住の折から脳の解剖学では,著名な1人であった。特に線維の方向性に注意して細く割く手法に関しては,ガルが最も早く始めた1人と言われている。この手法で嗅神経,動眼神経,三叉神経,外転神経の起源は神経節にあることを見出した1)(標題書424頁など)。灰白質と白質,さらに線条体を峻別し(Fig.3)2),また,corpora mamillariaの語を最初に使ったのもガルであった。ガルのおかげで,脳は肝臓のようにどこを切っても同じ機能というのではなく,それぞれが独立した機能を営んでいるという考えが有力になった。そして,ブローカの発見につながるのである。
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