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幼小児の小手術や生検は嫌なものである.暴れるのを防止するために,全身麻酔下で手術を行うこともあるが,麻酔に必要な検査をするのがまた局麻下の手術以上に大変になることもある.それ故,言うことを聞く年齢まで手術を引き延ばしにすることが多い.しかし,何らかの理由で不運にも幼小児の局麻下小手術を行うことになってしまった場合には,極力泣かさないようにして行っている.実際,四肢の小手術であれば4人中3人は泣かさずに終了させている.コツは,とにかく手術や注射を行うことを悟らせないことと,休みなくお話をし続けることである.泣いたり暴れたりする理由は恐怖心と痛みにあるので,この両者を与えないことが大切である.まず,明るく幼稚園のお話などをしながら,お薬を塗る(消毒する).次に問題の局麻の注射となる.お薬はちょっとしみるかもしれないことを一応伝えたうえで,大きな声で気を逸らしながら皮内針ですばやく真皮を貫通させる.この一瞬のみ痛みを感じるはずであるが,注射をされるものと思っていないので,大抵ちょっとピクッと反応するだけである.局麻薬はきわめて緩徐に注入し,麻酔の効いた範囲内で針を進めてゆく.これが最も骨の折れる作業で時間もかかる.粗な組織内で薬剤が急速に注入されないよう十分コントロールしなければならない.麻酔薬注射に時間を要するので,皮切部の皮用注射を追加しなくてもすでに効いていることが多い.麻酔さえ無痛で注射できれば終わったも同然である.それ以降の手術操作はまったく問題ない.局麻剤の注射時に看護婦さんが親切にも「ちょっと痛いけど注射だけ我慢してね!」とか言ったりすればその瞬間にこの計画は失敗に終わる.親が事前に子供に納得させるべく手術について十分な説明をしている場合も同様に無効である.「注射,痛い,我慢,針」などの恐怖用語は禁句であり,注射器や手術器械を手にしている姿は決して見られてはならない.終始,お友達の立場で休みなく話し続ける.いい大人が馬鹿らしくてやってられないと思う人には決してできない方法である.万が一バレて泣き出したら,諦めて押さえつけてでもすぐに終わらせる.
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