読者からの手紙
笑って泣いて9カ月
長幡 順子
1
1八王子保健所
pp.9
発行日 1964年2月10日
Published Date 1964/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203030
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「子安町の○○ですが」受話機を通して若い男性の声がした.就職後1カ月たった午後のことであった.届出のあった結核患者宅を訪問し不在だったため,メモを置いて帰ってきたケースからの電話だった.療養状況を聞き,保健指導をすませ,受話機を置こうとした矢先,「失礼ですが,高校はどちらでした?」と妙に親しげな口調に変わった.慣れない私は,あわてるようにして指導を終わった後でも,この電話の主が,同級生であったことにまったく気づかなかった.半ば,まくしたてるように自分の言いたいことがらを述べてしまった自分の態度に1人苦笑し赤面した.
このことがあってから3カ月後,照りつける真夏の太陽の下を,地図を片手に,受持地区でも遠方の結核患者の訪問に出かけた.下調べをした目標物がみあたらず,庭の木蔭で洗濯最中のおばさんに道をたずねた.「△△さんのお宅は,この近くでしょうか.」「ああ,そこんちは,この道をまっすぐ行くと,すぐ四ツ角に出るからそこを右へ曲って……」と教えてくれた.行けども四ツ角はみえず,どこまでもつづく一本道.やっとさがし求めたがあいにく不在で,逆もどり.山積みされた洗濯物を干しながら,ひょんな顔つきで,「どうだね,はいったかね.」と話かけてきた.どうもこのおばさん保険屋とかんちがいしたようだ.8月,私の受持地区では未熟児の届出が5件あった,その1人の未熟児訪問の際,未管理の乳児宅へ立ち寄った.
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