連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・64
泣いてもいい,でも泣きすぎては…
柳田 邦男
pp.426-427
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102052
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絵本を大人たちにすすめるには,2つの先入観念を壊さなければいけない。その1つは,絵本は,まだ言葉が発達していないため,長い物語などを読む力がない幼い子向けに,簡単な言葉にわかりやすい絵を添えてつくったものだという思いこみ。それは,絵本の奥深さを知らないことによる先入観念に過ぎない。
絵本というものは,大人になってからじっくりと読むと,人生経験や読書経験が豊かになった分だけ,味わい方が違ってくる。人生後半になって,定年退職したり,病気になったりしてから,絵本をゆっくりと読むと,絵本にこめられた作者の深い思い─人生でほんとうに大事なものは何かとか,人と人の心の絆の大切さとか,人が生きた証は後を生きる人の心に必ず遺されるといったこと─が,しっとりとした味わいで伝わってくる。
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