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あとがき
朝比奈 昭彦
pp.460
発行日 2021年5月1日
Published Date 2021/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206396
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世間の流れから随分と遅れたものの,私の病院でも数年前から電子カルテに完全移行しました.業務の効率化の面でメリットが大きく,他科との情報共有も容易になりました.ほかの先生が記載した部分も,以前のように達筆すぎて読めないようなことはなく,整然とわかりやすくなりました.また,臨床写真が保存できるため,患者さんへの経過説明に説得力が増しました.さらに便利に思う点は,再診した患者さんに対して,前回受診時のカルテ内容をまずコピーしてそこに修正を加えることで,前回の診察内容を確認しながら短時間で当日分の新しいカルテを作れることです.定期的な血液検査が必要な場合も,前回のオーダー内容をコピーすればほぼ万全です.コピーされずに立てられた新しい検査オーダーで,一部の必要項目が漏れ,検査結果の解釈に難渋した事例を最近続けて2例も経験しています.
しかしながら,受診のたびにカルテ記載を漫然とコピーするだけになって,カルテに毎回同一の文言が並んでしまうのはどうでしょうか.さらに,大きなモニターを見ながらカルテに書き込んでいると,つい患者さんから目がそれてしまいます.相手とコミュニケーションをしっかりとらなかったため,この医師は患者を診ずモニターしか見ない,といった類のクレームを頂戴することもあります.また,患者さん自身が時々モニターをじっと見つめており,カルテの記載内容も患者さんに筒抜けです.かつてはドイツ語や英語でカルテを書いた時代もありましたが,それこそなかなか実践できません.
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