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本誌を読まれている先生方の中で,専門医を目指している先生方は少なくないと思います.私自身は一昨年来,日本皮膚科学会の専門医試験の運営に携わっていますが,その中で,改めて皮膚科という学問の発展や奥深さに気づかされます.疾患の発症機序の解明や治療の進歩,ガイドラインの整備などが進み,経験や勘だけで診療を進めていた時代が過去のものになりつつあります.そうした知識を身につけて理論的に物事を考えることで,鑑別診断や検査,治療に深みが出ます.専門医試験の準備は,皮膚科学全体を系統的に眺めるとてもよい機会であると思いますし,新たな発見とともに,自らの今後の専門分野を考えるきっかけにもなるはずです.本誌はきれいなカラー写真がふんだんに使われ,臨場感があります.白黒写真しか掲載できなかった数十年前より,勉強しやすい環境が整っているのです.ところで,本誌への投稿は専門医になるための単位取得の手段でもあります.学会発表だけではその貴重な症例を後世に残すことができませんので,多くの方と症例を共有するためにも,論文作成には大きな意義があります.さらに,最近は海外の皮膚科雑誌も増えてきました.インターネットの普及で投稿のハードルは驚くほど下がっています.AIの進歩により英文で論文をまとめることも容易になっています.こうした国際的なチャレンジも若いうちから経験することを強く勧めます.最後に,日本皮膚科学会が最近集計したデータによれば,とても研究論文が多い研究志向の一部の先生を除いて,論文の作成数と専門医試験の合格率には正の相関がみられます.論文作成の過程でしっかりと考え,多くの原著や症例報告・総説を読むことが自らの実力を高めることにつながりますので,専門医を目指す先生方はぜひとも頑張ってください.
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