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あとがき
朝比奈 昭彦
pp.930
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205872
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15年ほど前までは,臨床写真と言えばフィルムカメラで撮影した映写スライドであった.医局の財政支出の中でも,カラーフィルム代と現像代が一定の割合を占めていた.スライド1枚1枚に患者情報を記載する単調な作業にうんざりしていたことを思い出す.撮影が成功したかどうかは,現像して完成したスライドを確認するまでわからないため,いつもハラハラしていた.フィルムを巻き上げてカメラの背中を開けたら,なぜか目の前に巻き上げ損ねたフィルムが鎮座していて,露光により写真を台無しにした苦い経験が何度あったことか.ストロボの不調など,カメラが予期せぬ不具合を起こしていたためにフィルム数本分の記録が飛んでしまい,学会発表を断念したことさえ珍しくなかった.
そのために,写真撮影は緊張を伴う作業であった.手軽でなかったからこそ,できるだけ良い写真を撮ることに腐心していた.患者さんのための記録を残す目的はもちろんのこと,カメラを構えた時点で学会発表にも耐えられることを大いに意識した.撮影後のトリミングは二度手間になるため,下着を含めて余分なものが映り込まないよう,構図に細心の注意を払っていた.
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