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あとがき
朝比奈 昭彦
pp.1034
発行日 2021年11月1日
Published Date 2021/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206525
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皮膚科の領域では,悪性腫瘍はもちろん,特に慢性炎症性疾患である乾癬とアトピー性皮膚炎で新薬の開発が目覚ましく進んでいます.私は医師になって間もなく乾癬の専門外来を始め,1990年頃に日本乾癬研究会(現在の日本乾癬学会)に入会しましたが,当時の会員数は100名にも満たず,乾癬の病態はサイトカインなのですかねえ,という状況でした.それから10年以上が経過しても,当時のT細胞の主役はTh1,サイトカインの主役はTNF-α,IFN-γとIL-1,6,12でした.私自身が乾癬の病態の話をするため2005年頃に使用したスライドには,まだTh17が登場せず,新しく注目されはじめた炎症性サイトカインIL-17をTh1のそばに申し訳なさそうに小さく書き,IL-23も,Th1を活性化させるサイトカインとしてIL-12に併記したのみでした.それをすべてわかったかのように語っていたのです.その後は病態の解明が加速し,IL-23/Th17軸の関与は疑う余地もなく,生物学的製剤を中心に乾癬治療が飛躍的に進歩しました.
もはや乾癬では新しい治療のターゲットが限られてきて,そろそろ新薬開発のフィーバーも終焉に近いかも,と思いはじめた矢先,その病態が乾癬以上にブラックボックスであるアトピー性皮膚炎で,新薬の開発ラッシュが始まっています.日本の患者数はこちらのほうがずっと多いため,インパクトは絶大です.IL-4/13をターゲットにした治療の効果は,乾癬ほどでなくとも私の予想を上回るものでした.関節リウマチで使われるJAK阻害薬がアトピー性皮膚炎に応用されたことも,予期しなかった展開です.
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