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あとがき
朝比奈 昭彦
pp.848
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206798
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毎年4月に迎える新しい医局員は,直ちに専門研修プログラムを開始し,5年間以上の研修期間と皮膚科専門医試験を経れば専門医の資格を取得することができます.ところが,この研修期間が長いためか,それが最終目標になってしまい,私の大学に限らず,専門医資格の取得後に退局を選ぶケースは少なくありません.さらには,専門医のメリットが感じられない現状から,研修を修了する前にプログラムから離れてしまう場合もあります.もちろん個別の事情や興味が最優先ですが,もったいないという思いもあります.私は,かつて自分の専門として皮膚科を選ぶにあたっては非常に悩み,皮膚科は皮膚のようにペラペラなのに,なぜそれを敢えて選ぶのか,などの揶揄も耳にしました.しかし,今では自信をもって,皮膚科は“more than skin deep”と断言できます.皮膚科は決して無味乾燥の学問ではなく,疾患の病態解明や治療が目覚ましく進んでおり,理論的で,噛めば噛むほど味が出てきます.研修施設に所属すれば,それだけ多くの貴重な症例を経験して学ぶことができ,臨床力も高まります.長い皮膚科医としての人生を考えれば,当初の苦労は決してマイナスになりません.専門医の資格取得は,自らのキャリアの本当のスタート地点でもあります.若い先生方には,皮膚科における自らの専門分野を見つけて,可能な限りそれをいっそう究めていけるように,ますます診療や勉学に勤しんでいただきたいと思います.また,そうした皮膚科の魅力をしっかりと医局員に伝えながら,各人の興味を伸ばしていけるように指南するのが,自分たち指導医の役目であると,改めて肝に銘じております.
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