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この4月から,歴史ある『臨床皮膚科』の編集委員を新たに務めさせていただくことになった.誠に光栄であり,それと同時に大変な責務に身が引き締まる思いであるが,精一杯頑張ろうと気持ちを新たにしている.投稿論文の査読の作業がこれだけ真剣勝負で,しかも公明正大に前向きに行われていることを,編集の現場に入って初めて知ることができた.諸先生方の貴重な臨床経験に基づく投稿論文は,日本の皮膚科医がその経験を共有して,臨床のスキルを高めるのに大いに役立っている.
ところで投稿論文を拝見して感じるのは,以前には少なかったようなケアレスミスの数々である.私が医師になりたての頃は,仕事に使える個人持ちのPCがまだ出始めたばかりで,日本語ワープロすらようやく普及し始めたという環境であった.自分が皮膚科雑誌に初めて論文を投稿したときは,マス目のある原稿用紙に手書きをしたのを思い出す.もちろんコピペなどできるわけがなく,手元は下書きの用紙で溢れて推敲の作業にも多大な時間がかかり,緊張感を持ちつつ一文一文を作り上げていった.文献の検索も,図書館で百科事典のようなデータベース本を年ごとに調べるという,時間と手間がかかる作業であった.今では,インターネットで何でも調べられる上に,論文を簡単に作成して推敲することができる.若い先生方は,今の当たり前の仕事環境が相当に恵まれていることを,是非とも知っていただき,あるいは,同じように苦労をしたかもしれない学生時代を思い出していただければと思う.せっかくの投稿論文に漢字の変換ミスや不完全なコピペ,脱字などがあれば,投稿者の真剣な気持ちまでもが伝わりにくくなってしまう.文献リストも論文の一部であるのだが,その体裁が整っていない論文も散見される.現代は過去より情報量が飛躍的に多くなり,PCやインターネットを駆使して作業を進めていくのは必然であるが,投稿する際にはケアレスミスに対する最終チェックをしていただければ幸いだ.時代の進歩についていけずにいまだにスマホの契約すらしていない私からのお願いである.
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