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あとがき
玉木 毅
pp.740
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205514
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どこでもそうだろうが当院でも,「患者様」という言葉が使われるようになった頃からさまざまな接遇研修が行われてきた.当初接遇といえば一流ホテルや飛行機の客室乗務員というイメージだったのか,リッツカールトンやJALの関係者による研修が行われた.例えばリッツカールトンでは常連客の客室内の過ごし方の癖に合わせてソファとテレビの配置を微妙に変える等々の話を聞き,なるほどとは思うものの,「ラグジュアリー世界の話を医療現場に?」という違和感を拭えなかった.最近はちょっと変わってきており,「おじぎは背筋を伸ばして45度」というような,表面的・枝葉末節・体育会的なものから,より現実的な現場の視点に立ったものになってきている.
医療以外の世界では従来から,この「表面的・枝葉末節・体育会的」な接遇が「おもてなし」としてはびこり,近年逆にひどくなっているような気がする.東洋経済のオンラインで最近,「日本は『感情労働者』を搾取しすぎている」という記事を見かけた.感情労働とは,例えば,笑いたくないのに笑顔を見せるなど,自分が本来抱く感情とは別の感情を表出させなければならない労働のことで,ホテル従業員や客室乗務員などを典型とするが,こうした「おもてなし業」以外にも感情労働を求められる職種は拡がっており,医療や介護の分野もその1つとされる.過度な感情労働の強制は労働者の精神や肉体に悪影響を及ぼして現場を疲弊させ,離職等により人手不足に拍車をかける.
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